📝 この記事でわかること
- 宿泊業の勤怠選びは「打刻方法」「シフト作成」「料金の単位」の3点で比較すると判断できる
- ジョブカンは機能追加で単価が上がる積み上げ制、KING OF TIMEは全機能一律300円、HRMOS勤怠は登録30名以下なら無料
- 打刻ポイントの配置と登録対象者の整理をシステム選定より先に済ませておく必要がある
早番と遅番と中抜けが混ざった時点で、市販の勤怠システムは選び方が変わる
フロント、清掃、調理、夜勤。同じ館内で働いていても、勤務の形がここまで違う職場はそう多くありません。朝6時台に入って昼で上がる人、15時から入って翌朝まで残る人、昼の休憩が3時間空く中抜けの人が、同じ月の同じシフト表に並ぶ。
そこにパート、派遣、清掃の委託スタッフが混ざります。雇用形態が違えば、打刻させる相手も、労働時間として数える範囲も変わる。表計算ソフトで組んだシフト表と、実際にタイムカードに刻まれた時刻が、月末に合わない。総務が一人で突き合わせている宿は珍しくないはずです。
この記事では、宿泊施設で実際に詰まるポイントを「打刻方法」「シフト作成」「料金の単位」の3点に絞り、公開料金のあるクラウド勤怠3社(ジョブカン勤怠管理、KING OF TIME、HRMOS勤怠)を同じ物差しで並べます。人数を掛けた合計額は出しません。宿によって在籍数も雇用形態の内訳も違いすぎて、掛け算の例は判断の役に立たないからです。
宿の勤怠が崩れるのは、だいたい打刻の場所とシフトの作り方
崩れ方には型があります。
ひとつは打刻の物理的な問題。事務所にしかタイムレコーダーがないと、清掃スタッフは客室階から事務所まで往復することになり、実際の作業開始と打刻時刻がずれる。かといってスマホ打刻に切り替えようとすると、今度は地下の厨房や離れの棟で電波が入るかという話になります。館内のどこで、誰が、何で打刻するのか。これを先に決めないとシステム選びは進みません。ICカードリーダーを置くのか、スマホでやるのか、顔認証のような端末を使うのか。宿の建物の形が、そのまま要件になります。
もうひとつはシフト作成。宿泊業のシフトは、稼働率の見込みと、スタッフの希望と、有資格者の配置がかみ合わないと組めません。希望を紙やメッセージアプリで集めて総務が手で並べ替えている限り、何を入れても作業量は減らない。希望収集の段階からシステムに乗せられるかどうかが分かれ目になります。
そして料金の単位。勤怠システムの多くは「1人あたり月額」で課金します。ここで効いてくるのが、宿特有の在籍構造です。繁忙期だけ入るパート、週1回だけの清掃応援、休職中のスタッフ。この人たちを課金対象に数えるかどうかで、同じ単価でも請求は変わる。単価の数字だけを見比べても意味がなく、「誰が課金対象か」「最低料金があるか」まで確認して初めて比較になります。
なお、変形労働時間制やみなし残業の細かい設定可否は、3社とも公開情報だけでは判断できません。宿泊業で1か月単位・1年単位の変形労働時間制を敷いているなら、契約前にその設定画面を見せてもらうのが早い。ここは営業に直接聞くべき項目です。
料金の単位が3社とも違う
ジョブカン勤怠管理は、機能を選んで積み上げる方式です。出勤管理・シフト管理・休暇申請・工数管理の4プランがあり、1プランなら1ユーザーあたり月額200円、2プラン300円、3プラン400円、4プラン全部で500円(いずれも税抜)。使う機能が増えるほど単価が上がる構造になっています。つまり「出勤管理だけでいい」という宿と「シフトも休暇申請も回したい」という宿で、同じシステムでも支払う額が2.5倍変わるということです。
最低料金は月2,000円。ユーザー単価×在職スタッフ数がこれを下回る場合は2,000円が請求されます。小規模な宿だと、人数が少なくてもここが下限になる。課金対象の扱いも明示されていて、グループ管理者・全権限管理者は課金対象外、休職者は課金対象、退職処理を済ませた人は対象外です。総務担当者を管理者として登録するなら、その分は乗らない計算になります。無料プランもあり、表示スタッフ10名まで・閲覧できる勤怠データは過去30日まで・API連携不可・一部の印刷やダウンロードが不可という制限つき。過去30日しか遡れないので、年単位の集計や労基署対応を考えるなら試用の位置づけです。
KING OF TIMEは逆の発想で、全機能込みで1人あたり月額300円の一律です。初期費用は0円、30日間の無料体験があります。機能を足しても単価が動かないので、導入後に「シフト機能も使いたくなった」となっても請求は変わりません。打刻手段はICカード、生体認証、スマホ、入退室管理との連携まで揃っていて、館内の複数箇所に打刻ポイントを作りたい宿とは相性がいい構成です。最低利用人数はトップページに制限がない趣旨の記載がある。税込か税抜かは明記が見当たらないので、見積りで数字を確定させる。
HRMOS勤怠(株式会社ビズリーチ)は無料枠が広い。登録人数30名以下なら完全無料で、従業員が31名以上いても登録を30名以下に抑えていれば無料のまま使えます。31名以上を登録する場合は1人あたり月額100円(税抜)から。有料オプションが1人あたり月額+100円/+50円で用意されていますが、どの機能がどちらに対応するかは公式の記載から対応関係が取れないため、必要な機能がオプション側かどうかは問い合わせで確かめてください。機能は勤怠管理、シフト管理、有給管理、日報、スマホ打刻。
| サービス | 1人あたり月額 | 最低料金・無料枠 | シフト作成 | 打刻方法 |
|---|---|---|---|---|
| ジョブカン勤怠管理 | 1プラン200円/2プラン300円/3プラン400円/4プラン500円(税抜) | 最低2,000円/月。無料プランは表示スタッフ10名まで・勤怠データ過去30日のみ | あり(希望収集・自動作成) | ICカード/スマホ/顔認証ほか |
| KING OF TIME | 300円(一律・全機能) | 初期費用0円、30日間無料体験 | あり | ICカード/生体認証/スマホ/入退室連携 |
| HRMOS勤怠 | 31名以上は100円〜(税抜)。有料オプション+100円/+50円 | 登録30名以下は完全無料。無料お試しあり | あり | スマホ打刻 |
で、結局どれを選ぶか。登録30名以下で、やりたいことが出勤簿とシフト表の作成に収まるなら、HRMOS勤怠の無料枠で始めるのが一番損がありません。機能を追加するたびに単価が上がるのを避けたい、あるいは館内の複数箇所にICカードリーダーや生体認証の打刻ポイントを置きたいなら、全機能一律300円のKING OF TIME。使う機能だけに払いたい、将来的に給与計算や労務まで同じシリーズで揃える構想があるなら、ジョブカン勤怠管理です。
判断がつかないときは、無料で触れる範囲が一番広いところから試すのが早い。KING OF TIMEの30日間無料体験、HRMOS勤怠の無料枠、ジョブカンの無料プランと、3社とも金を払う前に画面を見られます。
入れる前に決めておくこと
打刻ポイントを館内図の上に置いてみる
フロント、バックヤード、清掃控室、厨房、別館。スタッフが業務を始める場所と終える場所を書き出して、そこに打刻手段を置けるかを考えます。スマホ打刻で統一するつもりなら、電波が届かない場所がないか歩いて確かめる。ICカードにするなら、リーダーを何台買うかが初期費用になります。この作業を先にやっておくと、営業との商談が「うちはこういう建物なんですが」から始められて速い。
誰を登録するかを決める
清掃を委託業者に出している場合、その人たちは自社の勤怠管理の対象ではありません。派遣スタッフも、勤怠の管理主体は派遣元です。ここを整理しないまま全員を登録すると、課金対象の人数が実態より膨らむ。逆に、HRMOS勤怠のように登録人数で無料枠が決まるサービスでは、この整理がそのまま料金に直結します。
清掃業務そのものの進捗管理は勤怠システムの役目ではないので、そちらは客室清掃の管理アプリのような専用ツールの領域になります。混ぜて検討すると要件が膨らんで決まらなくなるため、分けて考えたほうがいい。
今のシフト表の作り方を書き出す
誰が、いつ、何を見ながら、どれくらいの時間をかけて組んでいるか。希望をLINEで集めているのか、紙で出してもらっているのか。この工程をシステムに載せ替えられるかどうかが、導入後に楽になるかの分かれ目です。3社ともシフト作成機能を持っていますが、希望収集の方法や自動作成の挙動は実際に触らないとわかりません。無料期間中に、来月分のシフトを本気で1回組んでみてください。
勤怠だけ直しても、宿の手間は全部は減らない
勤怠システムは労働時間の記録と集計の道具であって、予約や客室の管理とはつながりません。PMSと連携させて稼働率からシフトを自動生成する、といった話をする業者がいたら、それは別のシステムの機能です。
宿の事務作業のうち、どこが本当のボトルネックかは施設ごとに違います。月末の勤怠集計に3日かかっているなら勤怠システムの出番ですが、OTAごとの予約転記に時間を取られているならPMS・サイトコントローラーのほうが先。アレルギー情報が厨房に伝わらず毎回電話で確認しているなら、アレルギー対応の情報共有が先です。順番を間違えると、入れたシステムが使われないまま契約だけ残ります。
勤怠に絞って言えば、効果が出るのは月末の集計と、労働時間の実態把握。特に後者は、変形労働時間制を敷いている宿ほど効きます。誰がどれだけ働いたかが日次で見えるようになると、シフトの組み方自体が変わる。
まずやることはひとつ。今のシフト表を1週間分だけ手元に出して、予定していた時刻と実際の打刻がズレた回数を数えてみてください。
📋 この記事で比較したサービス(公式サイト)
「どれが自館に合うか決められない」「導入したが使いこなせていない」といった相談は編集部へ。条件を伺って、合いそうな会社の窓口までご案内します(各システムの操作・設定そのものは各社のサポートが最短です)。自社サイトからの予約を増やす・広告の出し方を見直す相談も同じ窓口で。
よくある質問
Q. 10室くらいの小さい旅館でも入れる意味ある?
A. 登録人数が30名以下ならHRMOS勤怠は完全無料で使えるので、小規模宿ほど導入のハードルは低くなります。
Q. 清掃を外部委託してるんですけど、その人たちも登録するんですか?
A. 委託業者のスタッフは自社の勤怠管理の対象ではないので、登録不要です。
Q. うち変形労働時間制なんですけど、3社ともちゃんと対応できるんですか?
A. 公開情報だけでは3社とも設定可否を判断できないため、この点は各社の営業に直接確認する必要があります。
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